明治28年9月脱稿
望まれて結婚し大きな屋敷に住み、長男・太郎を出産して人に羨ましがられる暮らしの「お関」が、十三夜の晩、突然実家を訪れた。そして、これまで受けた夫からの精神的虐待に堪えてきたことを両親に訴え、離婚の決意を涙ながらに語る。しかし、父親は静かに娘を諭し、「同じ泣くのなら妻として、太郎の母として泣け」と説得する。死んだ気で生きようと決意して実家を後にしたお関を乗せた人力車の車夫は、初恋の人「録之助」だった。